新NISAを始めるなら投資信託から、という話をよく見かけます。ただ、名前からは、自分のお金がどこに投資されるのかが分かりません。投資信託を買うとどうなるのか、例えを使いながら見ていきましょう。
投資信託は、株式や債券などの投資先を詰め合わせた「1つの箱」のような商品です。箱の中身は商品ごとに違うので、どの投資信託を買うかを決めることが、そのまま自分のお金の投資先を決めることになります。
「1つの箱」を買うと、中身すべてに少しずつ投資したことになる
たくさんの人から集めたお金を、専門家がまとめて運用する。これが投資信託の仕組みです。自分で何十社もの株を選んで買い集めなくても、箱を買えば、その全部を少しずつ持てます。


箱の中に入っている投資先の数は、数十のものから数千のものまであります。
ただし、買った人が箱の中身を1つずつ選んだわけではありません。
中身は、箱ごとの「運用方針」で決まっている
マネリス


運用方針には、どこの国の、どんな資産に、どういう基準で投資するのかが書かれていて、箱を作るときに決まっています。専門家がするのは、その方針に沿って箱の中身をそろえ、入れ替えることです。方針の外へは出られません。「日本の株式に投資する」という方針の箱が、いつのまにかアメリカの株式に変わっている、ということは起きません。
運用方針には、たとえばこんな違いがあります。
- インデックス型 … 市場全体の値動きに連動することを目指し、決められた基準に沿って中身をそろえる
- アクティブ型 … 市場全体の値動きを上回ることを目指し、専門家が銘柄(1つひとつの投資先)を選ぶ
よくある勘違い: 投資先は、専門家に任せておけばいい?
世界中に広く投資したいと思っていても、選んだ箱の方針が「日本の株式」なら、投資先は日本の株式だけです。買ったあとで、その箱の方針を変えることはできません。
だから大切なのは、自分の目的に合った箱を選ぶことです。目的と違う箱を選んでしまうと、その箱の中でどれだけ上手に運用されても、自分が思い描いていた投資にはなりません。
数千本ある投資信託の中からどれを買うかを決めることは、「自分のお金の投資先を決めること」そのものなのです。多くの人が買っている順の一覧もありますが、人気の投資信託だからといって、自分の目的に合っているとは限りません。
同じ「投資信託」でも、中身の広さはここまで違う
ここで言う「広さ」は、箱の大きさのことではありません。中身の投資先が、どれだけ広い範囲に散らばっているか、ということです。投資の言葉では、この散らばりを「分散」と呼びます。


投資先になるのは、株式・債券・不動産などです。同じ株式でも、世界中の企業に広げた箱から、人工知能や電気自動車といった1つのテーマに絞った箱まであります。複数の資産を組み合わせた箱もあります。
どれも「投資信託」です。投資信託という名前が付いていれば、自動的に中身が分散されている、というわけではありません。
名前はヒント、中身は書類で確認






投資信託の名前には、投資する地域や資産の種類が入っていることが多いです。ただ、その名前どおりの割合で投資しているとは限りません。
たとえば「全世界」と名前の付いた投資信託でも、中身の半分以上がアメリカの企業になっていることがあります。規模の大きい会社ほど多く組み入れる作りが一般的で、アメリカにはそうした会社がたくさんあるためです。
中身を確認したいときは、次の2つの書類を見れば分かります。
- 目論見書(もくろみしょ) … 何に、どういう方針で投資するのかが書かれた説明書
- 運用報告書 … 実際にどの銘柄を、どれくらいの割合で持っているのかが書かれた報告書
どちらも販売会社のウェブサイトなどで公開されているので、気になる投資信託は、買う前に一度確認してみましょう。
よくある勘違い: 投資信託を2本買えば、その分だけ分散できる?
必ずしもそうとは限りません。たとえば、「全世界の株式」の箱と「アメリカの株式」の箱を両方買うと、アメリカの企業を重ねて持つことになります。つまり、本数を増やしても、中身が重なっていれば投資先はあまり広がりません。大切なのは、何本持っているかではなく、どんな中身の箱を組み合わせているかです。
箱の中身の話は、ここまでです。中身が商品ごとに違うなら、その箱の値段は、どう決まるのでしょうか。
値段は1日1回決まり、注文するときにはまだ分からない
投資信託の値段は、1日に1回だけ決まります。この値段を「基準価額」と呼びます。注文を出す時点では、その日の基準価額はまだ決まっていません。株のように値段を見ながら売り買いすることはできず、下がったのを見てから安いところをねらう、という買い方もできないのです。
基準価額とは、投資信託の値段を1口(くち)あたりで表したものです。イメージしにくい人は、箱を分けた1ピースあたりの値段、と考えてみてください。中身の株式や債券が値上がりすれば基準価額は上がり、値下がりすれば下がります。


基準価額の表示は「1万口あたり」が一般的
基準価額は1口あたりの値段ですが、実際に表示されるときは、1万口あたりの金額を使うのが一般的です。「基準価額 12,345円」と書かれていても、1口が12,345円という意味ではありません。
よくある勘違い: 基準価額が安い投資信託のほうがお得?
基準価額が安くても、その分だけお得になるわけではありません。基準価額が安ければ、同じ1万円で多くの口数が買えるというだけです。出す金額が同じなら、基準価額が高くても安くても、手に入る中身の価値は変わりません。


買った投資信託の価値がこれから上がるのか下がるのかを決めるのは、箱の中身です。投資信託に元本の保証はなく、専門家が運用していても、出したお金を下回ることはあります。
そして、価値が上がっても下がっても、投資信託には決まってかかる費用があります。
買うとき・持っている間・売るときにかかる費用






主な費用がかかるタイミングは3つです。
| いつかかるか | 何の費用か |
|---|---|
| 買うとき | 購入時手数料 |
| 持っている間 | 信託報酬 |
| 売るとき | 信託財産留保額 |
このうち、購入時手数料と信託財産留保額は、かからない商品もあります。3つとも、持っている口数ではなく、金額に対する割合で決まります。同じ1万円分なら、口数が多くても少なくても、かかる費用は変わりません。
商品の一覧で「ノーロード」と見かけたら
- ノーロード … 購入時手数料がかからない投資信託のこと
「信託財産留保額」は、どこへ行くお金?
信託財産留保額は、解約する人から差し引いて、箱の中に残しておくお金です。
3つのうち、信託報酬は、持っている限りかかり続けます。投資信託の財産から毎日少しずつ差し引かれるので、自分で振り込む場面はありません。そのぶん、引かれていることに気づきにくい費用です。
アクティブ型は、インデックス型より信託報酬が高い傾向があります。平均で見ると、こうなります。
| インデックス型 | アクティブ型 | |
|---|---|---|
| 信託報酬の目安(年) | 0.3%前後 | 1%を超える |
| 100万円分を持っていると | 年3,000円台 | 年1万円台 |
※ 資産運用業協会調べ、2026年6月末時点・税抜(商品ごとの単純平均)。
ただし、実際に買うのは平均ではなく1本の商品です。ネット証券などで人気の高いインデックス型商品には、信託報酬が年0.1%を下回るものもあります(金融庁調べ)。どの箱を選ぶかで、かかる費用も変わるのです。
やめたくなったら売れる。ただし現金になるまで日数がかかる
投資信託は、原則としていつでも解約できます。何年持ち続けなければいけない、という決まりがあるわけではありません。
ただし、売ってすぐに現金が手に入るわけではありません。解約を申し込むと、中身を売って現金にする手続きが行われます。お金を受け取れるのは、申し込んだ日から数えて4営業日目以降です。海外の資産に投資する商品では、もう少し日数がかかることもあります。
クローズド期間(買ったあと、解約できない一定の期間)のある商品もあります。これも、目論見書を確認すれば分かります。
NISAは「制度」、投資信託は「商品」
投資信託とセットでよく出てくるのが、NISAです。
NISAは、投資で得た利益に税金がかからなくなる制度です。投資信託は、その中で買えるものの1つです。NISA口座を開いただけでは、投資信託は手に入りません。口座を開いたうえで、どの投資信託を買うかを自分で決めます。
※ この章では、投資信託に関わる部分だけを取り上げています。NISAをすでに理解している方は、読み飛ばしてかまいません。制度そのものは新NISAとはにまとめています。
ふつうの口座では、利益に20.315%の税金がかかります。NISA口座で買った投資信託なら、売ったときの利益にも、分配金にも税金がかかりません。
NISAには、つみたて投資枠と成長投資枠の2つがあります。つみたて投資枠で買えるのは、金融庁が定めた基準を満たす投資信託です。成長投資枠でも、対象から除かれている投資信託があります。同じ投資信託でも、どちらの枠でも買えるとは限りません。2つの枠の違いと使い分けはつみたて投資枠と成長投資枠の使い分けにあります。
NISAが決めるのは、税金の扱いと、買える商品の範囲までです。箱の中身までは決めません。
よくある質問
- 投資信託は、いくらから買えますか?
-
100円や1,000円といった少額から買える商品があります。最低いくらから買えるかは、口座を開く金融機関によって違います。
- 投資信託を売っている会社が倒産したら、預けたお金はどうなりますか?
-
なくなりません。投資信託には、商品を作って運用する会社、財産を預かって管理する会社、窓口として販売する会社という3つの役割があります。集めたお金は、これらの会社自身の財産とは分けて管理する決まりになっています。そのため、どこかの会社が倒産しても、預けた財産が倒産した会社と一緒に消えることはありません。
倒産した会社がどの役割かによって、その後の扱いは変わります。
- 販売している会社 … 投資信託そのものや運用には影響がなく、口座がほかの販売会社に移り、そのまま保有を続けられます
- 運用している会社 … 運用が別の会社に引き継がれるか、その時点の基準価額で払い戻されます
- 財産を管理する信託銀行 … その時点の基準価額で払い戻されるか、財産がほかの信託銀行に移り、そのまま保有を続けられます
同じ投資信託であれば、どこの窓口で買っても中身は変わりません。窓口はあくまで買う場所で、中身を決めているのは、その投資信託の運用方針だからです。
1つの会社が2つの役割を兼ねているときは?
運用会社が自ら販売する商品のように、1つの会社が2つの役割を兼ねることもあります。たとえば運用と販売を兼ねる会社が倒産したときは、口座がほかの販売会社に移ったうえで、運用も別の会社に引き継がれる、といった形になります。
- 株を自分で買うのと、どちらがいいですか?
-
どちらが正解、というものではありません。違うのは、選ぶ単位です。株は、どの会社の株を買うかを自分で選びます。投資信託は、どの箱を買うかを自分で選びます。1社を選ぶか、詰め合わせを選ぶかの違いです。
買ったあとにも、違いがあります。1つは、配当金や株主優待は株を直接持っている人が受け取るもので、投資信託を持っている人が直接受け取るわけではないこと。もう1つは、投資信託には信託報酬がかかることです。この費用は、詰め合わせを組んで管理してもらうためのものです。何十社ぶんを自分で選んで持ち続けるか、費用を払ってまとめて持つか。
ヤクマネとしては、最初の1本は投資信託から検討するのが分かりやすいと考えています。投資で難しいのは、選ぶことよりも続けることだと思っているからです。株は、選んだ会社を持ち続けるかどうかを、決算やニュースが出るたびに自分で判断する場面が出てきます。その点、投資信託は、中身の入れ替えを運用方針に沿って任せているので、仕事や家のことで手いっぱいの時期でも、買ったあとに続く判断は少なくて済みます。
ただし、任せられるのは中身の入れ替えまでです。どの箱を選ぶかは自分で決めます。
- 分配金とは何ですか?
-
決算のときに、信託財産(箱の中身)の一部を、投資信託を持っている人へ払い戻すお金です。分配金が払われると、その分だけ基準価額は下がります。箱の中身からお金が出ていくためです。
分配金には、運用で増えた分から払われるものと、自分が出したお金が戻ってくるだけのものがあり、税金の扱いが分かれます。また、分配金を払わずに運用へ回し続ける商品もあります。
分配金の2種類の呼び名
- 普通分配金 … 運用で増えた分から払われる分配金。課税の対象になる
- 元本払戻金(特別分配金) … 自分が出したお金が戻ってくるだけの分配金。課税されない
まとめ
この記事の要点は4つです。
- 投資信託は、投資先を詰め合わせた「1つの箱」のような商品。1つ買うだけで、中身のすべてに少しずつ投資できる
- 中身は、箱ごとの「運用方針」で決まっている。専門家に任せられるのはその方針に沿った運用までで、どの箱を選ぶかは自分で決める
- 分散されているかどうかは、名前だけでは分からない。目論見書を開けば、買う前に確認できる
- 買うとき・持っている間・売るときに費用がかかる。とくに信託報酬は持っている限りかかり続け、どの箱を選ぶかで変わる
投資信託では、箱を選ぶことが、そのまま自分のお金の投資先を選ぶことです。名前だけで判断せず、中身まで確認してから選びましょう。
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出典の一覧を見る
- 投資信託とは(資産運用業協会) — 投資信託に元本の保証がないこと、運用会社・信託銀行(受託会社)・販売会社という3つの役割に分かれて運用・保管・販売が行われることを確認できる
- 基準価額と分配金(資産運用業協会) — 基準価額が1口あたりの値段で1日1回算出・公表されること(ブラインド方式)、分配金が投資信託の決算のときに信託財産から支払われ、支払われるとその分だけ基準価額が下がることを確認できる
- 投資信託のコスト(資産運用業協会) — 購入時手数料・信託報酬・信託財産留保額の3種類の費用があること、購入時手数料がかからない「ノーロード」の商品があること、3つとも持っている口数ではなく金額に対する割合で決まること、信託報酬が保有中に日々差し引かれることを確認できる
- 信託財産留保額(資産運用業協会 用語集) — 信託財産留保額が、換金する受益者本人から徴収され、その手数料を残る受益者に負担させないために信託財産へ留保される仕組みであることを確認できる
- 投資信託の主要統計等ファクトブック 2026年6月版(資産運用業協会) — 公募株式投資信託(追加型)の信託報酬(運用管理費用)の平均水準(税抜・単純平均、2026年6月末時点)が、インデックス型0.33%・アクティブ型1.07%であることを確認できる
- リスク性金融商品の販売・組成会社による顧客本位の業務運営に関するモニタリング結果について(全体版)(金融庁) — ネット証券などで販売上位に入るインデックス型投資信託には、信託報酬率が年0.1%を下回るものがあること(2025年7月1日公表)を確認できる
- 換金の種類と手続き(資産運用業協会) — 投資信託が原則としていつでも解約できること、換金代金が申込日から4営業日目以降に支払われること、クローズド期間を設ける商品があることを確認できる
- 投資信託の安全性(資産運用業協会) — 販売会社・運用会社・信託銀行それぞれが破綻した場合の投資家財産の扱い(口座の他社移管・運用の引き継ぎ・繰上償還・信託財産の他行移管・分別管理)を確認できる
- 投資の時間|投資信託の交付目論見書はどこをチェックすればいいの?(金融経済教育推進機構) — 交付目論見書を購入前に確認できることを確認できる
- 投資の時間|普通分配金と特別分配金の違いってなに?(金融経済教育推進機構) — 分配金には課税される普通分配金と非課税の元本払戻金(特別分配金)の区別があることを確認できる
- NISAを知る(金融庁) — NISA口座で得た運用益・分配金が非課税になること、つみたて投資枠の対象が金融庁の基準を満たす投資信託であること、成長投資枠の対象から除かれる投資信託があることを確認できる





