オルカンとS&P500は、どちらも低コストで、投資先の多くも重なっています。そのため、名前や過去の成績だけを比べても、なかなか決められません。
違うのは、オルカンに含まれる「アメリカ以外の約4割」です。この約4割も持つか、アメリカだけに絞るか。それぞれを選ぶ理由と、知っておきたい点を比べます。
※投資信託そのものの仕組み(基準価額・費用など)は 投資信託とは にまとめています。この記事では、二択を決めるのに必要な分だけ説明します。
まずは名前の整理
「オルカンとS&P500」を比べる前に、2つの名前を整理しておきます。実は、オルカンは投資信託の略称、S&P500は指数の名前なので、言葉の種類がそろっていません。
| よく使われる呼び方 | 何の名前? | 投資先 | 連動する指数 |
|---|---|---|---|
| オルカン | 投資信託の略称 | 日本を含む世界47カ国の株式 | MSCI ACWI |
| S&P500 | 指数の名前 | アメリカの代表的な約500社 | S&P500 |
オルカンは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」という特定の投資信託を指す略称です。一方、S&P500は指数の名前なので、これに連動する投資信託は複数あります。
この記事で取り上げるのは、次の2本です。
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
以下では、前者を「オルカン」、後者を「S&P500」と表記します。
表に出てきた「指数」とは、「アメリカの代表的な会社」「日本を含む47カ国の株式」のように、決められた投資先を集め、その株価の動きをひとつの数字で表したものです。この記事では、分かりやすく「投資する会社のリスト」と考えてください。
指数そのものを買うことはできません。私たちが買うのは、その指数と同じように値動きすることを目指して作られた投資信託です。オルカンもS&P500も、運用担当者が値上がりしそうな会社を予想して選ぶのではなく、リストの構成に合わせて機械的に投資する「インデックス型」の投資信託です。
そのため、この2本を選び分けるときに見るのは、どちらのリストに沿って投資するかです。

なぜ、この2つが選ばれる?
この2本が候補によく挙がるのには、3つの理由があります。
- 持っている間の費用が低い
毎日差し引かれる費用(信託報酬)が、投資信託全体の中でも最低水準です。 - 多くのお金が集まっている
純資産総額が国内最大級で、運用が途中で打ち切られる「繰上償還」の心配が小さい商品です。 - つみたて投資枠で買える
どちらも金融庁の基準を満たし、新NISAのつみたて投資枠の対象になっています。
つまり、この2本がよく選ばれているのは、単に人気があるからではありません。費用や規模、新NISAでの買いやすさという、投資信託を選ぶうえでの条件がそろっているからです。
ただ、どちらも費用と規模に大きな心配がないとなると、「どちらが商品として優れているか」では選べません。では、何を基準に選ぶのか。決め手になるのは、投資先の違いです。
違うのは、アメリカ以外の約4割
マネリス


オルカンの約6割※1を占めるアメリカ株には、S&P500にも入っている世界的な大企業が多く含まれています。そのため、2つの値動きはかなり似ています。アメリカ株が大きく下がった日は、たいてい両方とも下がります。
※1 オルカンに占めるアメリカの割合は、2026年7月末時点で63.1%です。比率は月ごとに変わります。


「全世界」なのに、なぜ6割もアメリカ?
オルカンは、47カ国へ均等に投資しているわけではありません。株式市場での会社の規模が大きいほど、投資する割合も大きくなる仕組みです。世界の大企業はアメリカに多いため、オルカンの中でもアメリカが約6割を占めています。
S&P500も同じように、規模の大きな会社ほど投資する割合が高くなります。そのため、約500社に分散していても、上位に入る数社の値動きが全体に大きく影響します。
2つで違うのは、オルカンに含まれるアメリカ以外の約4割です。オルカンは、日本やヨーロッパ、新興国などの株式も持ちます。一方、S&P500にはアメリカ以外の会社は入らず、その分もアメリカの会社に投資します。
つまり、この2本を選ぶときに考えたいのは、アメリカ以外の約4割も持つか、アメリカだけに絞るかです。
アメリカに全部を預けて大丈夫?
S&P500を選ぶ理由は、世界を代表する大企業がアメリカに多く、この先の成長にも期待できるからです。最近ではAIや半導体の大手が注目されていますが、顔ぶれが入れ替わりながらも、アメリカ企業が世界の株式市場を長くけん引してきました。
一方で、戦争や政治のニュースを見て、「1つの国に全部を預けて大丈夫?」と感じる人もいるでしょう。この不安は、短期の下落と長期の不調に分けて考える必要があります。
短期的な下落は、オルカンでも避けにくい
ニュースをきっかけにアメリカ株が大きく下がれば、約6割をアメリカ株が占めるオルカンも影響を受けます。短期的な値下がりは、オルカンを選べば避けられるわけではありません。
S&P500で考えたいのは、アメリカの長期的な不調
S&P500に固有のリスクは、アメリカが長く不調になったとき、その影響が資産全体に及ぶことです。
実際、アメリカの株式市場には、10年前後ほとんど上がらなかった時期があります。2000年代は、ITバブルの崩壊で始まり、金融危機で終わりました。この10年間を通して見ると、S&P500は配当を含めてもマイナスでした。大きくて強い国でも、長く低迷することはあります。
それでもS&P500を選ぶのは、アメリカの成長に期待するから
アメリカ株がこの先もほかの国の株式を上回って値上がりすれば、S&P500はその値上がりを、ほかの国の値動きで薄めずに取り込めます。アメリカだけに絞ることは、成長への期待と、長く不調になったときの影響を、どちらもアメリカに集中させる選択です。
伸びない国まで持つ必要がある?
オルカンは、アメリカ以外の約4割をさまざまな国に分けます。その中に入るのは、これから伸びる国だけではありません。伸び悩む国も含まれます。
たとえば、新興国には、人口が増え続けているインドがある一方、すでに人口の減少が始まった中国も含まれます。人口の多さが経済成長を支えるなら、「人口が減る国は、オルカンの足を引っ張るのでは?」という疑問も出てきます。






働く世代の人口が減ることは、経済成長の重荷になり得ます。ただし、「人口が減る国を含むこと」と「オルカン全体が伸びなくなること」は、分けて考える必要があります。
1つの国が占める割合は小さい
オルカンの国ごとの割合は、それぞれの株式市場の規模に応じて決まります。新興国はすべて合わせても1割前後※2で、1つの国だけを見れば数%です。
※2 2026年7月末時点で11.2%。
その国の株価が大きく下がっても、オルカン全体への直接的な影響は、その国が占める割合に限られます。1つの国に100%投資する場合とは、影響の大きさが違います。
人口の減少と株価の下落は、同じではない
国全体の経済規模と、株式市場に上場している企業の業績は別のものです。企業は自国だけでなく海外でも事業を行うため、国内の人口が減っても利益を伸ばすことがあります。株価も、人口だけで決まるわけではありません。
実際、人口減少が続く日本でも、日経平均株価は2024年に約34年ぶりに史上最高値を更新し、その後も更新を重ねています※3。
※3 2026年8月30日時点の情報です。
ただし、「34年ぶり」ということは、前の高値を超えるまでに約34年かかったということでもあります。1つの国の株式市場が長く低迷することは、実際に起こります。だからこそ、1つの国が占める割合を小さくすることに意味があります。
伸びる国が変われば、オルカンの中身も変わる
オルカンが連動する指数は、世界の株式市場の変化に合わせて定期的に見直されます。ある国の市場が縮小すれば、その国の割合は下がり、代わりに伸びた国の割合が上がります。
30年後もアメリカが中心なら、オルカンもアメリカ中心のままです。別の国が大きく伸びていれば、その国の割合が増えています。どの国が伸びるかを予想し、自分で投資先を乗り換え続ける必要はありません。


もちろん、オルカンを選べば、伸び悩む国を持たずに済むわけではありません。アメリカ株の値上がりがほかの地域より大きい状態が続けば、アメリカ以外も含むオルカンは、S&P500よりリターンが低くなる可能性があります。
オルカンを選ぶのは、すべての国が伸びると考えるからではありません。どの国が伸びるかを自分で決めず、その時々の世界の株式市場に合わせて投資先の割合を変えていくためです。
成績がいいほうを選べばいい?
ここまで違いを見てきても、「実際にどちらが増えたのか」は気になるところだと思います。指数どうしを比べると、この10年ほどはS&P500がMSCI ACWIを上回ってきました※4。「リターンならS&P500」と言われる理由の一つです。
※4 米ドル建て・配当込みの指数どうしで比べた場合です。円に換算した場合や、比べる期間によって結果は変わります。
この差が生まれたのは、この期間にアメリカ株がほかの国の株式を上回ったからです。アメリカ株だけを持つS&P500はその値上がりをそのまま反映し、アメリカ以外も約4割含むオルカンは、その4割の成績が相対的に低かったため、結果に差がつきました。
ただし、アメリカ株がいつも上回ってきたわけではありません。先ほど見た2000年代には、アメリカ株がほかの国の株式を下回りました。比べる期間が変われば、成績が上になるほうも変わります。
過去の成績は判断材料の一つにはなりますが、それだけで、これから積み立てる商品を決めることはできません。
リスクが高いのはどっち?






ここまで見たように、世界的に株価が下がる局面では、オルカンもS&P500も大きく値下がりします。どちらも株式だけに投資する商品なので、投資する国の数が多いオルカンでも、値下がりそのものを避けられるわけではありません。
オルカンの分散が抑えるのは、特定の国に集中するリスク
アメリカだけが長く伸び悩んだ場合、S&P500はその影響を資産全体で受けます。オルカンも約6割は影響を受けますが、その間にアメリカ以外の国が伸びれば、アメリカ株の不調を一部補えます。
オルカンの分散が役立つのは、国によって成績に差が出たときです。「1つの国の不調が、そのまま資産全体の不調になること」を避けるための分散です。
共通するリスクは2つ
- 為替の影響を受ける
どちらも投資先の大部分が外国の資産です。円高が進むと、現地の株価が変わらなくても、円で見た基準価額が下がることがあります。 - 株式100%なので、値動きが大きい
株式市場全体が下がれば、どちらも大きく値下がりする可能性があります。
どっちを選ぶ?
ここまで見てきた2つの違いを、選ぶ理由と、知っておきたい点に分けて整理します。
| こう考えるなら | 向いているのは | 知っておきたい点 |
|---|---|---|
| アメリカ株が、この先もほかの国の株式より高い成績を出すことに期待したい | S&P500 | アメリカが長く不調になると、資産全体が影響を受ける |
| どの国が伸びるかを自分で予想せず、世界全体に投資したい | オルカン | 伸び悩む国も含むため、アメリカ株が好調な局面では、S&P500より成績が低くなることがある |
ヤクマネは、オルカンを選びます。
S&P500が今後伸びないと考えているからではありません。積み立ては何十年も続くため、その間にどの国の株式が最も伸びるかを、自分で予想しなくてよいほうを選びたいからです。
オルカンなら、世界の株式市場の勢力図が変わったときに、国ごとの割合もそれに合わせて変わります。次にどの国が伸びるかを予想して、自分で投資先を乗り換える必要がありません。この仕組みのほうが、長く積み立てを続けやすいと考えています。
よくある質問
- 両方買えば、いいとこ取りになりませんか?
-
両方を買うこともできます。ただし、いいとこ取りになるわけではありません。オルカンの約6割はすでにアメリカ株なので、両方買うことは「アメリカ株の割合を約6割よりさらに増やす」ことを意味します。たとえば半々で買うと、全体のおよそ8割がアメリカ株になります。アメリカの割合を意図的に高めるために組み合わせるなら問題ありません。ただ、最初の1本を決める段階なら、どちらか一方でも十分です。
- 「楽天・プラス・オールカントリー」も見かけます。オルカンとどっちですか?
-
「楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド」も、オルカンと同じMSCI ACWIに連動する投資信託です。
1つの指数に連動する投資信託は、複数の運用会社から販売されています。S&P500に連動する投資信託も、「eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)」だけではありません。
同じ指数に連動していても、持っている間にかかる費用や、集まっているお金の大きさには違いがあります。ただ、最初の1本を決める段階で何日も迷うほどの差ではありません。迷った場合は、純資産総額が大きいeMAXIS Slim版から考えてよいでしょう。
なお、商品そのものではなく、どの証券会社で買うかで差が出ることもあります。証券会社によっては、投資信託を持っている間にポイントがもらえるサービスがあり、対象になる商品も、もらえる量も、会社ごとに大きく違うためです。そこまで見て選びたい人は 新NISAの証券会社比較 を見てください。
- 一度決めたら、変えられないのですか?
-
変えられます。毎月の積立で買う商品は、あとから変更できます。それまでに買った分は、そのまま持ち続けても、売却してもかまいません。
NISA口座の商品を売却した場合は、売却した商品の取得額(簿価)分の非課税保有限度額が、翌年以降に復活します。売却した時点の金額がそのまま戻るわけではありません。
なお、ここで言う「変えられる」は、商品(銘柄)の話です。証券会社(金融機関)そのものを変えるのは別の手続きで、別の注意点があります。詳しくは 新NISAの証券会社・金融機関の選び方 にまとめています。
- 株式100%は値動きが大きそうで怖いです。ほかの選択肢はありますか?
-
あります。値動きの大きさを抑えたい場合は、毎月投資する金額を減らす方法と、株式以外の資産も含む商品を選ぶ方法があります。
代表的なのが、株式に債券などを組み合わせた「バランス型」の投資信託です。一般に、株式100%の商品より値動きが穏やかになりやすい一方、株式市場が上がったときの値上がりも小さくなる傾向があります。
まとめ
- 共通点
オルカンもS&P500も、低コストで規模が大きい、株式100%の投資信託です。オルカンも約6割はアメリカ株なので、値動きは大きく重なります。 - 違い
オルカンは、アメリカ以外の株式を約4割含みます。S&P500にはアメリカ以外の会社は入らず、アメリカ株だけに投資します。 - 決め方
アメリカ株に絞って、その値上がりを取り込みたいならS&P500。市場の中心が変わっても、自分で投資先を乗り換えずに世界全体を持ちたいなら、オルカンです。
この10年ほどはS&P500の成績が上でしたが、比べる期間が変われば結果も変わります。ヤクマネは、これから伸びる国を自分で予想しなくてよいことを理由に、オルカンを選びます。
同じように見える2つも、比べるポイントを「アメリカ以外の約4割を持つか」に絞ると、違いが見えやすくなります。どちらが優れているかではなく、自分が納得できるのはどちらの考え方かを整理して、選んでみてください。
口座がまだない方へ
この記事で比べたオルカンとS&P500は、下に挙げる主要ネット証券5社のいずれでも、つみたて投資枠で購入できます※5。
どの証券会社を選んでも2本とも買えるため、証券会社は、クレカ積立やポイント、サイトの使いやすさなど、商品以外の違いで選ぶことになります。
※5 2026年8月30日時点の情報です。
証券会社がまだ決まっていない方は、新NISAの証券会社比較 で各社の違いを確認してください。利用する証券会社が決まっている方は、以下から口座開設へ進めます(PR)。
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参考情報
出典の一覧を見る
- MSCI ACWI Index(MSCI公式) — 指数の構成が、日本を含む先進国・新興国あわせて47カ国であることを確認できる
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー) ファンド情報(三菱UFJアセットマネジメント公式) — アメリカの組入比率・新興国株式合計の比率(本文の※1・※2の値は2026年7月31日現在)を、最新の月次レポートで確認できる
- 楽天・プラス・オールカントリー株式インデックス・ファンド(楽天投信投資顧問公式) — 正式名称と、MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス(円換算ベース)に連動する投資信託であることを確認できる
- 「MSCI ACWIとは」(三菱UFJアセットマネジメント公式) — 指数の構成銘柄が定期的(四半期ごと)に見直され、国・地域別の構成比率が変化していくことを確認できる
- MSCI ACWI Index Fact Sheet(MSCI公式) — MSCI ACWI指数の期間別リターン(米ドル建て・配当込み)を確認できる
- つみたて投資枠対象商品リスト(三菱UFJアセットマネジメント公式) — eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)とeMAXIS Slim 米国株式(S&P500)が、いずれもつみたて投資枠の対象商品であることを確認できる
- NISAを知る(金融庁) — NISA口座で商品を売却すると、その商品の簿価(取得金額)分の非課税保有限度額が翌年以降に復活することを確認できる
- 教えて虫とり先生 第8回(金融庁) — 株式に債券などを組み合わせた「バランス型」が、一般に株式100%型より値動きが穏やかになりやすいことを確認できる
- 年次経済財政報告(令和6年度)第1章第1節(内閣府公式) — 人口減少による労働投入の減少が、日本の潜在成長率を押し下げる要因になっていることを確認できる
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